海外転勤に選抜され、海外勤務を始めても失敗してしまう人がいます。
会社がわざわざ海外に転勤させるということは、住居の手配、保険の手配、移動手段の確保や危険手当等の人件費増加をもってしてもそれを上回る利益があるという判断がそこにあります。
つまり、単純に日本から海外へ人を移すとはいえ、国内とは比べ物にならないほどの労力やコストがかかるので、基本的には会社内の優秀な従業員しか海外への転勤は行わないものです。
ですから、海外転勤する人というのは総じて優秀な方ばかりです。
それなのに失敗してしまう人が出るのは本当に悲しいことです。
私は2015年からフィリピンに駐在して、企業のフィリピン投資を支援させてもらっています。これまで多くの日本人駐在員と知り合いましたが、中には道半ばで日本への帰国を余儀なくされてしまった方もいます。
そこで、これから海外転勤を控えている方へ私の経験の中からお話ししたいと思います。
海外転勤で失敗する人とは?ここでは2つの例を紹介します!
私が考える失敗例は下記です!
その1:会社からの使命を全うできずに、道半ばで日本へ帰国してしまうこと
その2:駐在の目的を忘れた人、放棄すること(現地への同化も同義かも)
私は日本人の同胞としてなんとしても皆さんに「色々あったけど駐在できてよかった」と思ってもらいたいと心底思っています。
下記に順番に解説します。
【失敗例その1】会社からの使命を全うできずに道半ばで日本へ帰国してしまうこと
「海外転勤で失敗する人」といっても、失敗の定義が人によって違うと思うので、まずはここを定義します。私の中では海外転勤における失敗とは、「会社からの使命を全うできずに道半ばで日本へ帰国してしまうこと」とします。
前書きに書いた通り、海外転勤に選ばれる人というのは基本的には優秀な人です。
会社の中ではそばにいてほしい人材、手放したくない人材です。
そんな優秀な人材をわざわざ目の届かない、危険かもしれない場所で働かせるということは会社にとってはとても大きなリスクです。
しかも日本にいるときよりも莫大なお金がかかるのです。しかし、それでも会社としてその人材を海外に転勤させるという決断をするということは、その投資以上の収益(利益)が見込めるからということなのです。
ですから、たった一人の海外転勤者であっても、そこには多くのお金と犠牲が伴っており、その犠牲やコストを上回る売上なり利益なりを獲得して会社に還元することが求められているのです。
この本質をその駐在する本人に直接言うとプレッシャーになってしまい、本来のパフォーマンスを発揮できなくなる可能性があるかもしれないので、直接伝達されることはないかもしれません。
しかし、会社というのはあくまで売上や利益を最大化する集団ですので、この大目的の達成は避けては通れません。
このように、駐在員を派遣する大目的はどの会社でも同じです。
しかし、現地の事情は会社によって異なりますから、この大目的達成のためのアプローチ(戦略)は会社ごとに違います。
この会社の戦略の実行部隊の中枢となるのが駐在員なのです。
中枢ということは中心になって物事を考えることであって、実際の実行部隊は現地の社員になります。
現地の従業員である彼ら彼女らに会社の大目的をベースに現地の事情に即して考えた戦略を語り、賛同してもらい、その戦略に沿って的確に指示を出し、実行してもらい、成果を分析してより大きな成果が出せるようにしていく、成果が出なかったらその失敗の原因を探り、修正し、二度と失敗しないように戦略を練り直す。
これらのサイクルを現地の社員と共に一丸となって実行する全責任を負うのが駐在員なのです。
駐在員と聞くと、なんだか海外で楽しく生活していいなあといったお言葉を頂戴することもありますが、上記の話を読んで頂いたらそんなに甘いものじゃないということがお分かり頂けると思います。
私は今まで多くの駐在員と触れ合ってきましたが、会社の大小はあれど、皆さん同じように必死で仕事に打ち込んでいる方ばかりで、とても遊んでいるようには見えません。
というか遊ぶ時間がないというのが正直なところでしょう。
上記に紹介した仕事は本業の部分ですから、駐在員の皆さん共通です。
これに加えて、駐在員は日々の細かい仕事も「駐在員だから」という理由だけでこなさなければならないこともあります。
例えば、普通は日曜日ともなれば、皆さんお休みです。
しかし、駐在員はお休みの日だからと言って休めることは少ないのです。
お休みの日に本社の社長や役員の方が現地視察に来たり、連休を利用して海外出張に来られることがよくあります。自社だけでなく客先が訪問することもあります。
こういう時は、訪問者の入国から帰国までの安全を確保するのはその現地の駐在員の仕事なのです。
ということは、その社長なり客先なりの空港到着時間に合わせて空港まで迎えに行き、観光にお連れし、食事をし、飲み会をし。。。と言った感じで帰国までフルサポートするのです。
これが大体お休みの日に行われます。
社長や客先にとっては楽しいかもしれませんが、サポートする駐在員は大変です。
何かあっては困りますから、迎えに行くときの車選び、食事する場所、料理、お酒、滞在先などまさに旅行代理店のような仕事を休みの日にこなさなければなりません。
もっと細かい大変な仕事はたくさんありますが、それはまた別の機会に書きたいと思います。
このように駐在員の仕事というのは、会社の大目的達成のために幅広く責任を伴うとても大変な仕事なのです。
これに加えて海外特有の悩みも多くあります。
それが現地の人とのコミュニケーションです。
日本語であろうと英語であろうと他の言語であろうと、話す言語が理解できたとしても、本当の意味でその人の頭の中まで理解できることはありません。
口に出していることが全てではないのです。日本人もそうですよね。
これは外国でもそうです。しかし、日本で日本人同士であればそれでもなんとかなります。
なぜなら文化が同じ、バックグラウンドがほとんど同じだから以心伝心ということが日本では実際に可能です。
しかし、海外ではそうはいきません。
だから日本にいたとき以上にコミュニケーションが大事なのです。
ところが、日本人は仕事はできるのですが、このコミュニケーションが本当に苦手です。
現地の人は言葉にして伝えないと理解できないし、言葉にしたとしても日本人と同じバックグラウンドを持ってないのでその言葉が本当の意味で理解できないのです。
だからこそ何度も言って、何度も失敗して、何度も注意してそれでやっと少しできるようになるっていう感じなのです。
ここは粘り強くコミュニケーションを取ることが必須なのですが、どうしても途中で諦めてしまいたくなることがあります。
「どうせ言っても理解されない」
この境地に陥ると、極端にコミュニケーションがなくなり、話すのが辛くなります。
そしてどんどん接触する機会がなくなり、自分の殻に閉じこもってしまうのです。
しかし、上記で説明した通り、自分だけで完結できる仕事なんて一つもありません。
駐在員はみんな仲間の力(自社の従業員の力)を借りなければ仕事は進まないのです。
だから駐在員はスーパーマンじゃなくてもいいです、でもみんなと協力して仕事を進められない人は駐在員としては務まらないわけです。
このように本人は優秀なのに、仲間とうまく連携できなかったために仕事が進まず、結果的に成果を出せず、心の病気になって道半ばで日本へ帰国してしまう駐在員がいるのです。
大目的を達成できなかった以上、会社から見たら失敗例となってしまうでしょう。
【失敗例その2】駐在の目的を忘れた人、放棄する人(同化も同義かも)
前出の事象に直面した日本人がどういう行動を取るか。
大きく分けて2つのパターンがあります。
その1:目的達成、使命を全うするために頑張る
その2:目的達成、使命を全うするのは無理だと諦める
その1の方は頑張った結果、成果を出せる場合もあれば、残念ながら成果を出せずに道半ばにして帰国することになるかのどちらかです。
その2の方は頑張った結果、これは無理だ、どうしようもないと諦めることです。
ここではその2の方をお話しします。
日本人でその2を自ら選択する方はあまりいません。
しかし!
ここで注意してほしいのは、自分が知らない間にいつの間にかその2に突き進んでいる、その2の状態になってしまっている、ということです。
これはある意味人間の持つ防衛本能というか生き残るための調整能力とでもいうのでしょうか。
きっと頑張っている中で脳が、体が、どうしてもそれを回避しようとして自然に流れていった結果なのではないかと私は推測します。
いわゆる「ズレている人」のことです。
でも本人は自分が「ズレている」ことに気が付いていないケースも少なくありません。
これをも超えて現地に同化してしまっている日本人もいるようです。完全に現地の人と同じような考え方や行動をする日本人のことです。
これが悪いこととは思いません。
しかし、駐在員という立場であれば、少なくとも日系企業で働くのであれば、日本の会社の大目的やその目的達成のための戦略に従ってきちんと活動し、実績を残さなければなりません。
ということは、現地の人とは利害が対立することも少なくありません。
例えば、約束を守るとか、納期を守るとか、法律を守るとか、ルールを守るとか、そういうレベルのことです。
これって日本人なら「当たり前だ」と思うでしょう。
もちろん海外だってこれは当たり前だと頭では分かっています。否定する人はいないでしょう。
しかし、実際の仕事では当たり前のように約束を忘れたり、納期を守らなかったりすることはよくあるのです。
ここで駐在員であればこれら納期や約束を守る大切さを現地の従業員にきちんと伝えて、日本人と同じように守らせないといけません。これが駐在員の役割です。
しかし、容易に想像できるように、これは日本人駐在員と現地社員でも利害が対立します。
ここで日本人駐在員としての主張を通せるかどうかが分かれ目です。
ここで説得できなければ現地社員と同じ考えに流されていきます。
そしていつの間にか駐在員としてではなく、現地の社員と同じ立ち位置で物事を考え、判断するようになってしまいます。
確かに現地にいるなら現地の商習慣に従った方が楽ですから。
このようにして、楽な方、楽な方に流れていった結果、とても責任感があるとは思えないような仕事のやり方をするようになってしまうのです。
現地に馴染むのはいいことですし、それを否定するつもりはありません。
しかし、仕事であれば大目的があるのですから、それは死守しなければなりません。
ここは肝に銘じておいて頂きたいと思います。私自身にも言い続けます。
失敗は成長の源泉!大きな失敗があればあるほどその後の人生は豊かになる!
これから駐在する方には刺激が強い内容だったかもしれません。
しかし、これが現実です。
ところが、人生というのはよくできているもので、このような困難なこと、色々な失敗の経験というのはその人を更なる高みに押し上げてくれるのです。
失敗をたくさん経験している人ほど、人の気持ちが分かるようになり、自分が経験した失敗以下の失敗は失敗だと思わなくなります。
だから自分が「失敗したあ~どうしよう~」と思っても、それ以上の失敗をしてきた人からすればそんなの失敗のうちに入りません。逆に「お、いい経験してるねえ~」くらいにしか思っていないでしょう。
大きな失敗であればあるほどジャンプする高さも高くなります。
もちろん自ら失敗したくて失敗する人は論外ですが、努力して、頑張って、それでも失敗してしまうような失敗はどんどんした方がいいということです。
その失敗が大きければ大きいほどジャンプ力が付くのでほとんどのことが失敗だと思わなくなるものです。
死ななければあとは全てかすり傷である!でも心は大事に。心が病むほど頑張る必要はない!
失敗してもいいというのはその通りですが、限界はあります。
それは、自分の心を壊してまで取り組むべき仕事は存在しない、ということです。
仕事はどんな仕事であれストレスがかかるものです。肉体的にも精神的にも。
上記に書いた通り、ある程度のストレスは必要です。
ストレスにさらされないと人間は強くならないからです。ですから、楽をしたいなら強いストレスを与えることです。
これを乗り越えられれば、それ以下のストレスはストレスに感じないようになります。
これがあるから、同じ事象に対しても、何とも思わない人と落ち込んでしまう人がいるのです。
同じ事象ですよ!
それなら同じ症状が出てもよさそうですがそうならないんですね、人間は。
筋トレと同じです。同じ50キロという重りでも、普段から50キロを持ち上げている人からすれば重くないでしょう。
しかし、普段20キロしか持っていない人にとっては50キロは重たい、持てない、無理だと思うでしょう。これと同じです。同じ50キロという重りなのに、「重くないと思う人」と「重いと思う人」がいるのです。
これの解決方法はただ1つ。50キロを持てるように頑張ることです。
少し時間はかかります。しかし、日々トレーニングすれば持てなくない重さのはずです。
そしていつの日か50キロを普通に持ち上げられる日がきます。
しかし、いつから持ち上げられるようになったかは自分でもよく分からないはずです。
このようにストレスを与えることで人間は成長しますから、どんどんストレスを与えていきましょう。
しかし、20キロしか持てない人がいきなり200キロの負荷を掛けたらどうなりますか。
骨が折れますね、リアルに。
そう、実力に比べてあまりにも重すぎるのはダメなんです。筋肉を疲労させるどころではなくなります。
筋トレなら分かりやすいですが、仕事だと精神的な部分になるので分かりにくいんです。
だから、筋トレで言うところの骨折、仕事で言うところでは精神を壊すまで頑張る必要はないのです。
骨折してしまったらそもそもトレーニングどころではなくなってしまうのと同じで、精神を壊してしまうとそれ以上に失うものが大きくなってしまうからです。
失敗というものは死ななければ全部かすり傷!されど精神を壊すまではやらなくていい!
このように限界点をあらかじめ決めた上でその範囲で大きく失敗し、大きくジャンプし、もっと重たい重りを持てるようになっていけたらいいですね。
【帰国後に注意!】海外転勤から帰国後には要注意![家族も要注意!]
駐在員の生活は大変です。しかし、駐在員ならではの良い面もあります。
例えば、フィリピンであれば日系企業が集中しているのは田舎の方なのですが、住居は都会になります。
ですから、毎日都会から田舎へ通勤しなければならないので、駐在員であれば車が支給されます。
そして、大企業などになれば家族の安全にも気を遣うことになりますから、家族にも車を与えられることがあるようです。
そうなると、駐在員のお子さんは例えば中学生であっても自宅から学校までを毎日運転手付きの車で送り迎えをしてくれるわけです。
買い物に出かける時も自分で運転することはありません。
運転手を呼んで買い物に連れて行ってもらうのです。
奥様にも良い点があります。
それは東南アジアであればメイドさんを雇うことができます。
メイドさんにも色々なサービスがあるのですが、掃除、洗濯、料理など全ての家事を任せているケースもあります。
東南アジアではコンドミニアムと呼ばれる部屋が複数あるマンションを会社で借りてくれることが多く、この場合はメイドさんは住み込みで仕事をしてくれます。
メイドさん専用の個室や運転手専用の個室まであります。
こうなると駐在員の奥様は家事を自分で行う必要がありません。すべてメイドさんがやってくれるからです。
駐在員というのは任期があります。
会社によってまちまちですが、概ね3年~5年くらいでしょうか。
必死に歯を食いしばって頑張って無事任期を終えて日本に帰国したとします。
さて、日本に戻ってきちんと暮らせるでしょうか。
海外では満員電車に通勤するとか家事をするとかそういうことを体験しませんでした。
そこで突然今日から満員電車での通勤通学、掃除洗濯料理などできますでしょうか。
ここが帰国後の注意ポイントです。
私の知人で銀行員をやっている方がいます。
その方は海外転勤でインドネシアに数年間駐在していました。
家族帯同で、奥様と娘さんと一緒にインドネシアに駐在していました。
銀行の海外駐在はすごいです。
メイドさんは付くし、運転手も付きます。
娘さんは当時中学生だったと思いますが、毎日自宅から学校まで送り迎えを専属運転手が行っていました。
奥様は家にメイドさんがいましたから家事は一切する必要がなかったそうです。
さて、数年間の任期を終えて日本に帰国しました。
日本に帰国すれば電車通勤は当たり前です。学校にも自分の足で通学しなければなりません。
そこで、日本の学校に登校する日になって娘さんが発した一言が、「車はいつ迎えに来るの?」だったそうです。
冗談のような本当の話です。
そう、あまりに運転手付きの車通学に慣れてしまった娘さんは満員電車での通勤なんてもう考えられないようでした。
奥様もそうです。
家事なんてしばらくしていなかったために、家事をこなすのも日本に帰国した当初は大変だったそうです。
奥様も娘さんも「早く海外に戻りたい・・・」そう嘆いていたそうです。
ちなみに、1年後に今度はシンガポールに駐在することになったそうですので、またこちらのご家族は海外生活を満喫できるようです。今もシンガポールにいらっしゃいます。
このように人間というのは一度楽な生活、快適な生活を手にしてしまうと、中々元の生活に戻るのは大変なのです。
ちなみに、この方の場合はなんとか調整できたのでよかったですが、結局日本の生活に戻れず、会社を辞めて現地採用として駐在していた国に戻って働き続ける人もいました。
こういう方の場合は残念というか現地に同化してしまった人に入ります。つまり、もう現地のやり方に慣れてしまったため、日本の生活に付いていけないのです。
そう考えると、日本の生活は楽じゃないですね。ホント皆さんお疲れ様です!
まとめ:海外転勤者は覚悟して赴任しましょう!
いかがでしたでしょうか。
少し怖い話をしてしまったかもしれませんが、駐在員になる方はぜひ肝に銘じて任期を全うしてほしいと思います。
駐在員は会社を代表する選ばれし戦士です。
海外に行くという意味では日本代表と言っても過言ではありません。
現地の人からすればあなた自身が彼らにとっての日本のイメージになるのです。
本社からの使命をクリアすること、そしてたまには肩の力を抜いて駐在生活を楽しむことを通して、ぜひ海外駐在生活を自身の人生の糧にしてほしいと願っています。
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