USCPAのフィリピンライフ
仕事

フィリピンに会計のプロが少ないのはなぜ?

私はフィリピンで会計税務のコンサルタントとして仕事をしています。意外と思われるかもしれませんが、フィリピンには会計のプロが少ないように感じます。日系企業だけでも1,500社近く進出しているのに、です。そういう意味では、USCPAを取得した方にはチャンスがあるとも言えます。

私はUSCPAを取得した後、フィリピンに移住し、その後は会計税務のコンサルタントとしてコンサルティング会社で働いています。

その中でいつも思うことは、会計のプロが少ない、ということです。

ご存知の通り、会計という仕事は企業がある限り必ず発生する仕事です。どんな会社も経理部がない会社などありません。なぜなら会社は売上や利益を上げなければならないため、それらを会社として管理しなければならないからです。

しかも売上や利益を管理するとは言っても、適当に管理すればいいわけではありません。一定のルールに従って会社の数字を管理しなければなりません。

フィリピンでいえば、PFRSというフィリピンの会計基準があります。USCPAを勉強したことがある方であれば、IFRSを少しかじっていると思いますが、まさにあのIFRSのIをPに買えただけのような会計基準です。USCPAを勉強した方であればUS GAAPですね。

フィリピンではほぼどの会社もこのフィリピンの会計基準に則って財務諸表と言われる会社の成績表を作成しなければならず、しかも毎年監査法人による会計監査を受けなければなりません。さらに、その会計監査を受けて公認会計士からお墨付きを受けた財務諸表をSEC(証券取引委員会)という登記を管轄している役所に提出しなければならないのです。しかもこれらの財務諸表は一般に公開されますので、誰でも見ることができます。

こんなに大事な会計の仕事なわけですが、なぜか会計に携わる人が少ないのです。

まあ私の狭い経験の中での話だからかもしれませんが、日系企業の場合、多くの会社は製造拠点としての機能をフィリピンの会社に求めていることが挙げられます。つまり、日本の親会社が設計した製品をフィリピンの工場で作るということです。だから、フィリピンの工場は親会社から言われたものを作る、という仕事に終始するため、会計なんぞの話が分かる人よりも、いかに言われた製品を指示された納期までに作り切れるか、という「生産のプロ」が重視される傾向にあり、それ以外の機能はあまり重視されていない気がします。

普通の事業活動では、

「営業(マーケティング)」

「研究開発」

「製造(購買、倉庫管理、品質管理を含む)」

「管理業務(経理、人事、総務など会社を支える業務)」

があるわけですが、このうち、「営業」「研究開発」「管理業務」は日本の親会社や他のアセアン地域で(例えばシンガポールなどで行っているケースが多いです)行っているので、わざわざフィリピンで行う必要がないのです。

こうなれば、適材適所ということで、フィリピンには「製造」としての機能に重点を置き、それ以外の機能は他のところ(拠点や地域)で行う、ということになります。

そうなれば、わざわざ「製造」にフォーカスするために作ったフィリピン拠点に、「管理業務」を行うような従業員(会計のプロなど)を配置する必要がないのです。

製造業に携わっている方であればお分かりだと思いますが、「製造」の業務は0.01円単位でのコストダウンを日々研究する業務であり、製造スピードを1秒でも速くするために、道具の置き場を変えてみたり、作業員の立ち位置を変えてみたり、まさに血のにじむような努力を日々行っていらっしゃいます。製造業に携わっている方には本当に頭が下がる思いです。

そんな会社が多いフィリピンにおいては、ある意味、”会計なんぞ”のバックオフィスの仕事を行う社員の人件費なんて負担したくないわけです。そりゃそうですよね、0.01円単位で頑張って切り詰めようとしてるのに製造のプロからしたらよくわからん難しい会計の話でまくし立ててくる高給取り(本当は高級じゃないにしても)はムカつくだけです。

しかも親会社からしても、フィリピンの工場はとにかく言われた製品を言われた品質で言われた納期で製造して納品してくれればそれでよし!としているのですから余計にそうです。

ところが、です。

製造を中心にしている会社であっても、会計という仕事はなくならないのです!会社である以上これはどうしても行わなければならないことです。

そうすると、会社としてはどうするか。

当然コスト(人件費)は抑えたい訳です。そうなればコストが安い人を採用しますね。つまり、あまり経験値がなく、若い人です。でもこれだと会社としての要求水準は満たせないことが多いです。ならどうするか?そう、外部の専門家の知恵や経験を「借りる」のです。

少しの間「借りる」だけであれば、正社員として常時雇用するよりは安く済みます。でもって経験値の少ない社員の力量を補ってくれるわけです。これは使わない手はありませんね。

こんな感じで、私のUSCPAとして会計税務のコンサルタントの仕事は日々忙しいのです。

つまり、私の仕事は、会社の業務を補うことです。また、会社の従業員のサポートを行い、一流の会計のプロを採用しているのと同等の価値を生み出すことです。

これに拍車をかけて会計のプロが少ない理由は、「フィリピンのイメージ」だと思います。

皆さん「フィリピン」と聞いたらどんなイメージですか。

恐らく多くの方は、危ない、ごみ山、銃が出回っている、ドラッグ、などなど悪いイメージが先行しているのではないでしょうか。

これのお陰でUSCPAとしても日本の公認会計士にしても、フィリピンで働くことは人気がありません。皆さん海外と言っても、ロンドン、ニューヨーク、アジアであっても、香港、シンガポールなど。。。フィリピンで働いてみたいと思う資格保有者は皆無です。

私はフィリピンで会計税務のコンサルタント会社を運営しているわけですが、日本人の有資格者はほぼ採用できません。フィリピン国内に日本人の有資格者(USCPAでも日本の公認会計士でも)はもういませんし、日本で募集していてもフィリピンで働きまっす!なんていう有資格者はいません。これは私の友人であるフィリピンで一緒に働いている有資格者も口を揃えて言います、人材がいないと・・・。

そう!まさに需要はあるのに供給が足りていないのです!

ですから、USCPAに合格して海外でUSCPAとして経験を積んでみようかなと思う方!ぜひ一度検討してみてください。人生変わるかもしれません。でも甘くはないのでその点はご承知おきください。これは会計に限らずどんな分野の仕事でも同じですけどね。

ちなみに、私のゴルフ仲間には、もう通算10年以上フィリピンに勤務しているツワモノもおります。これは本人の意思ではなく、「後任がみつからないから」だそうです。一度後任が見つかってようやく日本へ帰国できたのもつかの間、後任が辞めてしまい二タブフィリピンへ赴任することになってしまったとか・・・。既に還暦を超えてしまい、いつまで続くんだと嘆いておりました。まさに「替えが効かない」状態です。

そんなフィリピンベテランの先輩からぽろっと漏れた一言が忘れられません。

「海外生活は悪くない。でも親の死に目に会えなかったことが何よりも悔しい」と話してくれました。なるほど、「海外」で「替えが効かない仕事」をしているということはそういうデメリットもあるのかと気が付かされました。

社長をされている皆さん、常に後任を育てる意識を持ちましょう!

はい、私も肝に銘じていきます・・・。

ABOUT ME
ようちゃん
こんにちは! 本ブログの運営をしているようちゃんです。 学生時代は部活(水泳部)とバイトに明け暮れ、勉強はほったらかし。大学4年生の時に就活しながら1年生と授業を受ける講義もあり、リクルートスーツを身にまとったおっさんは新入生に白い目で見られながらもなんとか卒業にこぎつけた。 英語が好きだったこともあり、将来はなんとなく海外で働いてみたいなあとぼんやり思っていました。 そこで、大手総合商社を中心に、海外駐在できたり、世界を飛び回れる仕事をやらせてもらえそうな会社を選んではひたすら受けまくりました。 運よく海外に拠点を広げ続けている上場企業の商社に入社できました。 入社前の先輩社員との懇談会で台湾やイギリスなどに駐在経験があった社員から海外駐在時の話を聞くことができ、自分も同じようなキャリアを描けるのかもと社会人人生を楽しみにしていました。 しかし、配属先は経理部に。経理なんてなにをする部署なのかもわかっていませんでした。一体いつになったら海外に行けるのか。そんな不安とともに社会人生がスタートしました。 結局新卒から10年ほど上場企業の正社員として経理部で働きました。その間に紆余曲折がありながらもUSCPA(米国公認会計士)のライセンスを取得。 当時の後輩がインドに赴任したことをきっかけにバックオフィス周りの指導やサポートを行っていました。その後輩は営業経験しかないのに、インド法人を丸ごと任されてしまい、営業以外の仕事をどうしたらいいのか困っていました。私は営業はできませんが、経理を中心とした事務系の仕事はある程度アドバイスできました。当時としては大したサポートにはなっていなかったとは思いますが、それでもとても感謝されました。 そこで思いました。 海外に出ている日本人は同じように困っているに違いない。それなら今の会社だけでなく、たくさんの会社をサポートできるかもしれない。 このインドに放り込まれた後輩をサポートしたことがきっかけで、自分の人生設計を見直した結果、上場企業の正社員という安定した地位を捨て、2015年に突然フィリピンに移住し、海外コンサルタントとして働き始めました。給料が日本にいた時の3分の1近くになって嫁に怒られ、嫁ブロックにあいながらも何とか凌いでいます。 私の予想通り、海外に出た日本人の駐在員は困っていました。 そこで海外コンサルタントの出番です。 日本の常識は海外ではなかなか通じません。 とは言っても、日本のやり方でビジネスを進めていく必要がある場面もたくさんあります。 だからこそ海外コンサルタントは必要なのですが、少子化のせいなのか、若者の海外離れのせいなのか、海外コンサルタントは圧倒的に足りません。 あなたのサポートを待っている企業が必ずあるはずです。 本ブログを通じて、少しでも海外コンサルタントに興味を持ってもらい、海外コンサルタントの世界に参加してくれる仲間が増えてくれれば、駐在している国はもちろん、日本も元気を取り戻してくれることと確信しています。 ぜひ仲間になりましょう!