仕事を選ぶとき、自分の好きなことを仕事にしようとする人がいる。野球が好きだから野球選手。英語が好きだから英語教師。それで幸せを感じられるならそれでいいと思う。ところが世の中には自分で仕事を選べるにもかかわらず、嫌々仕事をしている人がいる。好きでも好きじゃなくても従業員、会社員であれば1日8時間は仕事をしなければならない。通勤時間も含めれば、月曜日から金曜日までしかも定年になるまでとなれば人生の大半を仕事に捧げることになる。
こんなに人生を捧げるのに嫌々仕事をするなんてもったいないと思う。どうせ働かなければ生きていけないのであれば、この仕事時間をいかに有意義なものにするかが人生を楽しく過ごす上で大事なのではないかと思っている。
仕事は自分で選べるのだから好きに選んだらいいと思うが、仕事が苦行になっている人は下記の循環が起きているのではないかと推察している。
仕事が楽しくない
だから、興味が持てない
だから、その仕事を深堀出来ない
だから、成果が出ない
だから、つらい
だから、続かない
だから、その分野で上位を取れない
だから、その分野で上位を取れないとモチベーションがダウンしてしまう
この悪循環にはまってしまうと結構つらい。何をやってもうまくいかなくなるかもしれない。
で、この循環で言えば、最初に「楽しくない」と思ってしまったらもう無理ということだ。つまり、どんな仕事に就いたとしても、「楽しいこと」を見つけることが最優先だ。どんな仕事でも必ず「楽しいこと」があるはずだ。でもただ単に仕事をこなしているだけでは見つからないことが多いのが厄介なところ。言われたことを言われた通りにやっているだけでは基本的にはつまらない。そう、自分で自分なりの「楽しみ」を見つけなければならないのだ。「自分なりの」と言う部分がミソで自分が楽しいと思うポイントと他人が楽しいと思うポイントは違う可能性がある。だからこれは自分で見つけなければ意味がない。
私の例を出すと、私は大学卒業後、商社に入社した。商社と言えば聞こえはいいが、新入社員なんて何にも使えない。雑用ばかりだ。というわけで自分も最初は雑用ばかり。先輩に言われた通りのことを右から左にこなすだけの日々。ミスすれば怒られる。商社に入ったんだから海外でのプロジェクトをガンガンやって世界を飛び回って・・・といういわゆる商社マンはそこにはなかった。現実はそんなもんだ。私に課された業務の一つに文書管理があった。経理部に配属された私は経理の知識ゼロだったこともあり、経理業務はしばらくできなかった。経理部と言うのはとにかく紙が多かった。伝票やら決算書やら、とにかく毎日大量の紙が出る。しかも法律でそれらをある一定期間は保管しておかなければならないという。そんな伝票の置き場所なんて会社内にはなかった。そこでどこに保管しているかというと、外部の倉庫会社のスペースを借りて保管していたのだ。そして、昔の伝票などの現物を見たい時がたまにある。そんな時に先輩からあの伝票が見たいから取り寄せろ!とか言われたらすぐに預け先の倉庫会社に電話して持って来てもらうのだ。そして見終わったらまた倉庫会社に電話して引き取りに来てもらい再度預けてもらう。そんな文書管理の仕事を任されていた。これは経理のスキルは何もいらない。きっと誰でもできるはずだ。そんなことを日々やっているうちにふと疑問が浮かんだ。定期的に新しく書類を預けているけど倉庫会社のスペースはどんだけでかいんだ!?そう、書類を預けるばかりに夢中になっていたが、それはつまり倉庫スペースを借り増しているということであり、倉庫料金が膨れ上がっているということだった。そこで、倉庫に預けている文書の一覧を手に入れ、本当に預けておかなければならない書類なのか1つずつ精査することにした。そうすると、結構な量の書類が既に保存しておく必要がない書類であることが分かった。そこで、これらを捨ててよいか上司に確認し、役員の承認を得た上で廃棄することにした。その結果、倉庫保管料は削減され、会社のコスト削減に貢献することができたのだ。これは文書保管を担当していなければ気が付かないことであり、仕事の楽しさを覚えた瞬間でもあった。この経験から何かを変えることに面白みを見出し、他の仕事に移ってからも様々な変化をもたらしていくようになった。もちろんすべてがうまくいったわけではないし、変えたくない人から文句を言われることもあった。しかし、言われたことだけを右から左にやっているだけではつまらんという発想からなにかできないかという思いでどんな仕事にもあたるようになっていった。
いずれの仕事だって最初は興味なんてないし、楽しくはなかった。でも続けていくうちに自分なりに楽しさを見出し、興味がわき、自分なりに「こうした方がもっといいのではないか」という視点ができ、それを実行に移せたときは楽しかった。結果が出た時はその何倍も嬉しかったが結果が出なくても自分なりの視点を発見できただけでも密かに面白かった。
あれからかれこれ15年以上が経過したが、様々な仕事を通じて「何かを変えること」に面白味を見出すようになった気がする。それが得意なのかも、とは思いつつ好きではない。でも何かを変えている、変えようとする部分が見つかると楽しくなる。だからきっと、自分は何かを変えることが好きではないけど得意なことなのかもと思うようになる。なぜなら何かを変えるのは楽しいからだ。
従って、楽しいから得意になり、得意だから楽しくもある。楽しいから続けられるし、続けられるから得意になり、結果が出るということもある。
しかし、上述の文書保管の仕事のように、やったことがない仕事は興味もないし楽しくもない。それでも続けることでふと疑問に思うことがあると思う。そこを見逃さないこと。疑問が出たら「なぜだろう?」を自問自答する。そうすると、「ここはおかしいな」とか「ここはこうすればもっとよくなるんじゃないかな」ということが思い付くと思う。それを実行してみるのだ。無意味な抵抗勢力は無視だ。あなたのその視点に賛同する人は必ずいる。上司を巻き込めれば最高だが、難しいなら上司の上司を巻き込む。それがうまくいけばいいし、いかなかったとしてもまた再チャレンジすればいい。そうやってその道のプロ(その仕事においては右に出るものがいないほどの社員)になればもう社内では一目置かれる社員になるはずだ。
ただし、一朝一夕にはその仕事のプロにはなれない。やはり時間はかかる。目安は3年。楽しみを見つけるまでの時間は人それぞれだが、どんな仕事にも楽しみは見出せる。楽しみが見出せないなら楽しみを見出そうと仕事してみたらいい。楽しみが見出せれば仕事が楽しくなり、その仕事のプロになれる。プロになればあなたのスキルを必要としている人はいるはずだ。その人に教えることでさらに磨きがかかる。そんな楽しそうに教えてくれるあなたに周りは尊敬の眼差しだ。そしてあなたはもっと得意になっていく。
そしていつのまにはそれはあなたの天職になっている。天職とはまさにあなたが見出すものである。天職とは天から降ってくるものではない。あなたが自分自身で引き寄せ、勝ち取るものである。
私はそういう思いで日々の仕事に取り組んでいる。