CPAは意味ないとよく耳にします。
しかし、私が実際にフィリピンで会計事務所を運営している中で、会計部門の管理職の採用を行う場合は、CPAを最優先で探すことにしています。
社内にはCPAではないものの、長年記帳業務や税務申告書業務など実務を積み上げてきた従業員がいますから、その従業員を管理職に昇進させることも検討はします。しかし、その従業員は今まで積み上げてきた実務に関しては当然強いのですが、管理職ともなれば不測の事態に対応したり、経験したこともないような仕事にチャレンジしなければならないことも多いのです。つまり、自分の経験値ではどうしようもない課題にも対処しなければならないのです。
こういう事態に対してはCPAホルダーは大変な底力からを発揮してくれます。
CPAとはいえ、会計の勉強だけでなく、税務、監査、経済、法律など世の中のあらゆるビジネスに関する事項を勉強しています。これがその人材の底力となっており、あらゆる場面で活躍できる基礎力を持っているのです。
結果的に幅広く業務を行うことができるのがCPAとなっています。
私の会社でもたたき上げの社員は業務には詳しいのですが、新規の仕事に対してはどうしてよいか分からず結果を出すことが難しいのに対し、CPAは新規の仕事に対してもあらゆる知識を動員し、持ち前のバイタリティでなんとか解決策を見出し、フルパワーで結果が出るまで取り組んでくれます。
これが私のようなマネジメント層に対して絶大な信頼感を生み出す結果となっています。
こうした私の実体験から、私が会計部門もしくは税務部門の管理職を採用する場合は、まずCPAホルダーを探すようにしています。
CPAは意味がないと言われる理由
私の実務経験の中からでは、CPAが意味ないとは全く思わないのですが、なぜ日本人の間ではCPAは意味ないという話になっているのでしょうか。
【CPAが意味ないと言われる理由その①】CPA取得の目的があいまい
CPAは日本の場合は監査法人に勤務したい人、会計専門で業務を行っていきたい人など一部の特殊な業務に就きたい方が取得するようなイメージがあると思います。
CPAは日本では公認会計士と言われる国家資格ですが、一般的にはなじみがない資格ですよね。そもそも受験する人がかなり限定されている上、日本独特の偏差値制度も重なって相当狭き門になっています。
しかし、海外ではCPAは会計や税務部門、弁護士なども取得するような結構一般的な資格なのです。
信じられないかもしれませんが、聞くところによれば、日本企業を買収した海外の会社で、日本の会社に赴任して会計部門を任された外人の最初の質問が「この会社にはCPAは何人いるんだ?」だったそうです。
それくらいCPAは一般的な資格であり、特別な人だけが取得する資格ではないわけです。海外ではある一定以上の役職に就くためにはCPAがないと昇進できないという会社もあるようです。
そんな海外では会計の仕事をしてある程度の役職に就くなら当たり前のように保有していなければならないCPAなのですが、日本ではどうしても「公認会計士」ということで見る目が違うような気がしています。
CPAは会計を中心にビジネスを行う上では知っていなければならない税務、監査、法律などあらゆる項目を勉強しますので、会計の専門家を目指す方でなくても社会人として知っておいた方がよい事柄を幅広く学習できる資格です。
ですから、会計専門家以外にも、営業職、マーケティング、弁護士など様々な職種、職位の方が勉強し、資格を得ているのです。
そうなると、当然ながら、会計業務以外のために取得した人もいますから、人によってCPAを取得する理由が違うのです。
これがCPAが意味ないと言われてしまう理由の一つな気がします。
要するに、会計の専門家を採用したくてCPAホルダーを採用したのに、その人は営業職の経験しかなかったらそりゃ「仕事ができない」という話になってしまいます。
そりゃそうです。だってその方はCPAホルダーとはいえ、経験値は営業職なのですから会計の専門家としては使えません。
CPAホルダーはそれぞれ人によって取得目的が違いますから、その人のバックグラウンドと取得目的をよく確認しなければ、採用的にミスマッチとなり「使えない」というレッテルを貼られてしまうことになります。
【CPAが意味ないと言われる理由その②】採用側と応募側の期待ギャップ
理由その①とも少し関連しますが、CPAは様々な職種、職位の方が取得する資格であるため、CPAホルダーだからと言って必ずしも会計の専門家というわけではないのが現状です。
しかし、日本では「公認会計士」と呼ばれる資格と位置付けとしては同等のものであるという解釈がありますから、「公認会計士」と同じ実力を求めようとするわけです。
ここに大きな問題があります。
そもそもCPAを取得している人は会計の専門家を目指そうとした人ばかりではないのです。しかし、逆に日本の公認会計士が持っていないようなスキルや経験値を持っていることが多いです。
ですから、日本の公認会計士のように監査法人で同じように働くのは難しかったとしても、別の領域や職種で力を発揮することはできるはずなのです。
なので、採用する側も応募する側も期待値を一致させる必要があります。
【採用側の方針】CPAを選んで採用します
私はフィリピンで小さな会計事務所の運営を任されていますが、会計部門や税務部門の管理職を採用する場合は、積極的にCPAを選んで採用するようにしています。
【CPAを好んで採用する理由その①】学習内容が明確で期待ギャップが少ない
CPAは非常に幅広い内容を学習しています。会計は当たり前ですが、監査、税務、法律、経済などビジネスに必要と思われるありとあらゆる項目がテスト範囲になっています。
これはCPAは会計業務の専門家とはいえ、会計だけが分かっていればCPAとしての職務を十分遂行できるわけではないためです。
このため、CPAを保有しているということは、ある一定以上の学習を行い、試験において十分なアウトプットができたということを指しています。
採用を行う際には応募者はできるだけ自分を良く見せようとするものです。これは当たり前なことですので否定はしません。しかし、採用側の立場からすれば、「こんな勉強もしました」「こんな経験もしました」と主張されたところで、一体その人がどれほど満足のいく勉強をしたのか、こちらが求める経験値が本当にあるのかなんて分からないわけです。
しかし、CPAホルダーともなれば、学習内容が決まっており、合格基準があり、それをパスしたということであればどういう学習をしてきてどれほど習熟できているのかは明らかなわけです。もちろん全部を覚えているということはないでしょうが、少なくとも合格基準に達するようなアウトプットができたということですから忘れているなら少し学習し直せば思い出すことでしょう。
このため、本人からイチイチ説明を聞かなくてもCPAホルダーというだけで、どういう勉強をしてきてどれほどの内容を理解できているのかは共通認識ができるため、期待ギャップが少ないのです。
【CPAを好んで採用する理由その②】資格を取得するバイタリティがある(努力家の証明)
精神論になってしまい恐縮ですが、資格を取得することは簡単ではありません。しかも資格取得は誰かに強制されるものでもありません。あくまで自分の意志で取得するものです。
しかも、資格を取得するということはそれに合格するだけの勉強を行う必要があります。社会人の皆さん、学生の皆さんでも理解できると思いますが世の中には誘惑がたくさんあります。学生ならバイトや飲み会、部活やサークルなどやることはてんこ盛りです。当然授業もあります。社会人は普段は仕事、残業あり、土日も付き合いや家族サービスなど自分の時間を確保することがとても難しいはずです。
そんな中で、それほど簡単とは言えない資格取得にチャレンジするなんて普通の人は難しいはずです。そりゃ疲れていたらいっぱい寝たいし、友達や同僚、上司に飲み会に誘われたら断るのも大変でしょう。
しかし、資格を取得するということはある程度の時間は確保し、しかもそれをある一定期間の間は継続しないといけません。
普通はこれができないのです。
しかし、CPAを取得する人は「この継続的な時間の確保」をなんとか実行するのです。これは実際はとても大変ですし、それを行ってかつ結果も出すなんてとてもバイタリティがいるのです。
ですからCPAホルダーというのは日々の誘惑に打ち勝ち、自分にムチ打ち、そして合格まであきらめずに取り組むことができたまさに「努力家」なのです。
これが通常の仕事に生きないわけがありません。
やはり、実際にCPAはバイタリティがあり、責任感が強く、最後まであきらめずに仕事の結果を出す人が多いのです。
【CPAを好んで採用する理由その③】CPAを採用して失敗したことがない
最初は半信半疑でしたが、2015年からフィリピンに赴任し、6年目となった今ですが、今まで私の会社でCPAを5人採用してきました。
いずれのCPAも期待を裏切らず、私の想像を超えるパフォーマンスを発揮してくれています。
実務のたたき上げの社員も1人管理職に登用しました。
月次のルーティンワークではCPAホルダーもたたき上げのNon-CPAの社員もパフォーマンスに差はあまりありません。
しかし、緊急の問題や誰も取り組んだことのない仕事などについては明らかにアウトプットが違います。
おそらくCPAホルダーは自分の頭で考え、解決策を見出し、結果を出すまでTry & Error(試行錯誤)を繰り返して走り切る癖が付いているんでしょう。
逆にNon-CPAは通常業務には強いものの、自分の知らない課題に対してはどうしてよいか分からず先に進めなくなってしまうようです。もちろんそういう時は上司に相談して上司に解決策を仰げばOKです。
ただ、管理職という立場で評価をするのであればどちらがパフォーマンスがいいかは明らかでしょう。
やはり、それなりに苦労して時間を掛けて勉強してきたCPAホルダーのポテンシャルを感じます。
つまり、CPAホルダーとは単純な「会計の資格保有者」ではなく、あらゆる課題を解決に導くために必要な要素を徹底的に学習できた人でかつ一定の基準をクリアできた人ということでしょう。
これを外部機関がちゃんと証明してくれているのですから、採用側としては雲をつかむような採用活動をするよりはよっぽど効率的な採用活動ができるというものですし、実際私の会社で採用したCPAは皆大いに力を発揮してくれていますので、今後もCPAは優先的に採用していこうと思います。
【USCPAについての質問!】米国公認会計士(USCPA)に関するよくあるQ&Aまとめ
まとめ:CPAは実力もしくは潜在能力の証明書です
いかがでしたでしょうか。「CPAは意味ない」という単純な議論ではなく、採用側と応募側のミスマッチ、期待ギャップがこのフレーズがでてきた原因のような気がしてなりません。
しかし、少なくとも、CPAはそれを取得できたほどの学習量と努力の証明であることは現場にいる私が実感していることです。
日本人でCPAを目指す方は、ぜひ目的と活用用途を明確にした上で取得し、CPAを活かして転職するのであれば適切に転職活動を行ってくださいね!
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