海外転勤は誰にとっても不安なものです。初めてであれば不安じゃない人の方が珍しいと思います。海外転勤は会社命令です。本来海外転勤を命じられる人は会社にとっては仕事を任せられる優秀な人材です。しかし本人は海外転勤を望んでいない場合も少なくないようです。それでも責任感が強い方であることことが多いので一生懸命仕事に取り組みますし、正直海外転勤者で遊んで暮らしている人は私の周りには誰もいません。それくらい皆さん真剣に仕事に打ち込んでいます。そんな方たちが次々と海外転勤の苦しさに耐えられなくなり、日本へ帰国していきました。
海外転勤がうまくいかなかった理由の一つに、私は「英語力の不足」があると感じています。しかし、私が重視している英語力は普通の学校で勉強した英語力とは少し違います。
これ以上同胞を失いたくない。そのような思いからこれから初めて海外転勤される方へお伝えしたいと思います。
・自ら伝えたいことを発信できる英語力を体得すること
・資格やTOEICの点数なんて現場では役に立たない
・かっこよく話そうなんて考えてはいけない
・ビジネス英語なんて気にしない
・英語は道具の一つである
何人もの同胞が道半ばで帰国していくのを見てきました
私はフィリピンに駐在してかれこれ5年以上になります。私はUSCPA(米国公認会計士)としてフィリピンに進出や投資を行う会社の支援をしてきました。フィリピンのビジネスに関する情報はあまり世の中に出回っておりませんので、これからフィリピンで工場を建てようとしているクライアントのために会社を作ったり、工場建設のお手伝いをしたり、実際に会社の仕事の一部をお手伝いしたりしてきました。
その中で、日本から海外転勤を命じられた社員の方がフィリピンに駐在することになります。フィリピンには人生で初めて来たという方も少なくなく、その方にビザを取得してあげたり、フィリピンでの生活の仕方のノウハウを教えたりとフィリピンについて色々と指導させて頂く機会が多くありました。
フィリピンにおける会社の設立をお手伝いしたり、社員の採用のお手伝いをしたり、実際に会社の業務をお手伝いしたりと本当に一から会社運営の一部に携わってきたことで、会社そのものが我が子のような感覚を覚えることも珍しくありません。フィリピンで会社を作るのは結構大変で時間も労力もかかりますし、そのビジネスを軌道に乗せたり駐在員に生き生きと働いてもらえる環境を整備するのも簡単ではありません。そんな中で会社が利益を出したり、自分が採用を手伝った現地社員の方が元気に働いている姿を見るととても感動します。
このようにうまくいくケースもありますが、中にはどうしてもフィリピンの生活に馴染めず、会社から帰国するよう命じられて道半ばで帰国する方もいらっしゃいました。これは仕事がうまくいかなかったというよりも、フィリピンという空気や雰囲気に精神が追い付いていけなかったことが原因な気がします。
我が子のように会社を見てきた私からすればこんなに悲しいことはありません。こんな言い方をしたら失礼かもしれませんが、手塩にかけて育ててきた子供が体調を崩して自分の元から去っていく。数年間もお付き合いのあった方ですし、会社の設立段階から色々とお世話になってきた方ですから本当につらいです。私に他にできることはなかったのか。ただでさえ少なくなってきた日本人ですから一人も欠けてほしくありありません。
ではなぜ帰国することになってしまったのか、考えてみました。
【英語が下手?】下手で結構!英語そのものよりも伝わったかどうか結果を重視しよう!
海外転勤を命じられる人というのは仕事ができる方です。これはほぼ確実に言い切れます。私の周りにいる海外転勤者はほぼ全員優秀な方です。というのも、海外に日本人を派遣するということは、例えば工場であればラインに立って製品を作るような仕事を日本人には求められていません。それは現地の方がやるからです。ではなぜ日本人が駐在しないといけないのか。それはまさに「日本人である」からです。日本の会社の場合はほぼ客先は日本の会社であることが多いです。つまり、海外に工場はあるものの、結局は日本の客先のために製品を作ったりサービスを提供したりしているのです。ですからそこには「日本品質」というものが必ず求められます。それは製品そのものの品質は当たり前ですが、約束の日時までに届けてくれるとか、遅れそうなら事前にちゃんと伝えて到着予想日時を教えてくれるとか、別の方法を提示してくれるとか、進捗状況を随時報告してくれるとか、こういった仕事の進め方は日本独特なものです。私もフィリピンに来て初めて知りましたが、フィリピンではこのようなことは常識ではありません。約束の日時に間に合わないのは日常茶飯事、その理由は不明、遅れるにしても事前の連絡はなし、代替策もなし、進捗状況の報告もない、このような仕事のやり方では日本企業としては仕事になりません。しかし、フィリピンにおいては特に普通ですのでもし日本企業が日本人抜きで現地に仕事をしてもらおうと思うと、これらを全部現地社員に一から教えないといけません。これには膨大な時間が掛かりますし、言葉の問題でなかなか伝わりません。
そこで日本人の力が必要となるわけです。
日本人からすれば約束した日時にお届けするなんて当たり前ですよね。そう、そういった日本では当たり前の感覚を持っている日本人が現地にいないと仕事が回らないのです。
で、気が付いた方もいるかもしれませんが、ここに大きなストレスの原因が発生します。そう、日本人の感覚と現地の感覚が相当ズレているんです。どちらが良いとか悪いとかそういう話をするつもりはありません。ただ、やはりズレている、違うということです。しかし、客先は日本企業です。であれば、やはり日本の感覚で仕事をすることを求められるわけです。この感覚のズレから多くの問題が生じます。日本人が現地の感覚を理解できないのと同様に、現地も日本の感覚は理解できないのです。この感覚を埋める、とまではいかなくても近づける、分かってもらう、という努力は必要になります。
フィリピンの場合は、これらを自分の英語で行わなければなりません。
相手は人間です。どこかの本に書いてあるセリフを読み上げてもダメです。少し大きな会社になれば通訳を雇う会社もありますが、これもダメです。これらは全てあなたの言葉ではありません。はっきり言います、現地ではあなたの英語が下手とか全然気にしていません!そもそも英語は外国語なのだから下手で当たり前です。アメリカ人が「こんにちは。お元気ですか?」なんて言ったら「おー!日本語出来るね!」ってなりますよね?それと同じです。そもそもフィリピンでいえば、英語は彼らにとっても外国語ですから英語を話すことは勇気がいることなのです。フィリピンに来て働いてみれば分かりますが、大卒の社員でも英語はそれほど話せません。もちろん日本人よりは話せますがなにより自信がないようで全然話しません。だから英語で仕事の指示をするなんてそれは素晴らしいことなのです。下手だから話さない、というのはもったいないです。
でも日本人の感覚はこれが普通だと思います。
まとめると・・・
・自分は英語ができない、英語が下手だ。
・だから、あんまり話さない。
・話さないから、相手に伝わらない。
・相手に伝わらないからミスが多くなる。
・でも、英語が下手と思っているからミスに対する指摘もうまくできない。
・ミスを指導しないからさらに間違える。
・そして、両者ストレスがたまっていく。
・相手からすれば、「あの日本人は教えてくれない」
・日本人からすれば「英語が下手だからどうせ伝わらない、教えても意味ない」
・このようにして会社の雰囲気は悪くなり、業績は落ち、そして社員は辞めていき、結局日本人も耐えられなくなって日本に帰国してしまう。
分かりますか。英語が下手とかどうでもいいんです!そんなこと考えないでいいんです。相手が仕事ができるようになればそれでいいんです。
フィリピンで5年働いて分かったことがあります。相手は人間ということです。人間だから多少言葉が通じなくても情熱と気合である程度は相手に通じるものです。だから必死で自分が相手に伝えたいことを伝えるんです。そうすれば相手だって真剣に聞いてくれます。だから最初は日本人から下手な英語でもいいから相手に「こうしてほしい!こうやってほしい!」ということを伝えることに全力を傾けてください。日本人が本気なら相手だって本気になってくれますよ。だって同じ人間ですから。
この気持ちの切替さえできれば、仕事でも日常生活でも絶対うまくいきます!逆にこれができないと海外では生きていけないでしょう。だから私は強く言いたいです。自分のアウトプット力を磨いてほしい、と。それがあなたや家族、社員を会社を守ることにつながります。
通訳を雇った時の話はこちらを参考にしてください。
【アウトプット力は重要!】眠れない日が続きました。夢の中にも出てきました。仕事のパフォーマンスもガタ落ち。
偉そうなことを書きましたが、まさにこれは私が通過してきた日々でした。私はアウトプット力がこれほど大事だとは海外転勤当初は気が付いていませんでした。
というのも、私は海外転勤前はTOEIC900点くらい、英検準1級、米国公認会計士ライセンス保有、日本にいた頃から日常的に英語は使い、海外の子会社の現地担当者と英語でメールや電話会議をする程だったので、ある意味では「舐めていた」と思います。
こんな私ですら海外転勤後は苦労の連続でした。
まず海外転勤してから3ヶ月くらいは相手の言っていることがさっぱり分かりませんでした。使う単語も難しいし、話すスピードも早いし、おまけに専門的な領域のディスカッションなので全然ついていけませんでした。
そうはいっても日本人としての役割は最初に述べた通り、「日本品質、日本水準の担保」にあります。しかし、相手の言っていることが分からないのだからどうしようもありません。失敗続きで客先からは怒られるし、それを解決しようとフィリピン人社員に伝えようにもどうやって言ったらいいか分からないし、全然伝わらないし、反論されても何言ってるか分からない。完全に客先と現地社員の板挟み状態でした。
これぞ海外転勤した日本人の仕事です。そう、客先と現地社員の板挟みになって双方にうまく協力してもらう、まさにこのコーディネーション力が日本人の最大の役割です。片方の考えや要求の押し付けじゃダメです。双方の妥協点を探ってお互いを納得させること、これがポイントです。
とまあ今では分かったのですが、当時はとにかく客先からの要求に100%応えるような対応をしていたので現地社員とは毎日ケンカしてました。というより英語力がないのでケンカにならず、まあ陰口みたいなものがあったように思い出します。そんなことばかりの日々でしたので、精神的にやられてしまい、毎日2時間くらしいか寝られない日々が続きました。午前1時に寝ても3時には目が覚めてしまう、寝たくても寝られない。そんな状態ですから仕事のパフォーマンスは上がらずミスが多くなり客先から怒られる・・・。客先に謝るのは日本人の役割です。現地社員のミスだったとしても全て「日本人の管理能力」を問われて怒られるのは私です。現地社員からは「お前の指示が悪い!」と文句を言われ、客先からは管理能力を問われるという、怒られるときも「板挟み」です。これが海外転勤した日本人駐在員の現実です。
こんな状態が続いたときに、「海外転勤は自分には向いてないんじゃないか、もう日本へ帰ろうかな・・・」なんてぼんやり考えていました。周りの日本人駐在員には「オレ、もう無理っぽいから会社辞めるわ」って愚痴をこぼしていたことを思い出します。
でもせっかく手にした海外転勤のチャンス!ここで終わったらもったいない!妻を説得して、仕事も無理やり辞めてもらって、無理矢理反対を押し切ってフィリピンに付いてきてくれた妻にも申し訳ない!
そんな気持ちからもう少しだけ頑張ってみるか・・・あと1回頑張ってみてダメだったら日本へ潔く帰ろう、そう気持ちを入れ替えて仕事に新たに取り組み始めました。
そこで私が始めたのが「とにかく相手に自分の言いたいことを伝える!」というシンプルなことです。これで状況が変わり始めました。
フィリピンへの移住を決断した内容については下記の記事を参考にしてください。
ビジネス英語?ネイティブ英語?全部不要!英語は意志疎通の道具に過ぎないと割り切ろう!
そう、まさにタイトルの通り、私はかっこよく英語を話そうとしていたのです。今まで英語を使って仕事をしてきたし、米国公認会計士としてかっこよくないといけないという変な(?)固定観念もあったと思います。
でもよく考えたら私は英語を教えているわけではないのです。相手が日本語ができないから英語を使っているだけで、別に英語じゃなくてもいいのです。身振り手振りでも、紙に絵を書いてもなんでもいいんです。要は相手に自分がしてほしいことが伝わればいい。その伝えるための選択肢の一つに英語があるだけです。だから伝わればいいわけです。そこにカッコよさを求める必要性は微塵もありません。
ちまたではビジネス英語と日常英語とか色々区分けがありますけど、そんなもの私からしたら意味不明です。そんなことを気にするのはネイティブやネイティブ級に英語ができる人くらいでいいでしょう。
日本人が尊敬語や謙譲語を使いこなすことはビジネスでは必須ですが、アメリカ人がビジネスで尊敬語ができなかったくらいでビジネスにならないとは思えません。尊敬語が正しく使えなかったとしても、相手の言っていることが分かればそれでいいではないですか。こちらだってアメリカ人が日本語を話せても完璧に話せることなんて期待してないはずです。それが逆の立場になった瞬間に完璧に話せなきゃ!って思うのはおかしいですよね。しかも相手は外国人です。日本人のように完璧に話さないと!なんて思っている人は誰もいませんよ。
繰り返しになりますが、大事なのは「自分の言いたいことを伝えきること」です。ここでは相手に分かってもらう、理解してもらうというところまでを含みます。一方的なプレゼンテーションじゃないのであくまで相手に理解してもらってゴールです。つまり、相手が理解したかまで確認しないとダメです。
言葉(英語)だけで説明するのが難しければ、紙に絵を書いてもいいし、メールで箇条書きにして付けくわえてもいいし、複数手段を使うことも有効です。
英語はその道具の1つに過ぎない、このことは抑えておいてください。
時間がないならとにかくアプトプットの練習だけしてから渡航して!
ここまで読んで頂いた方ならお分かりでしょう。そう、とにかく「自分の言いたいことを伝えきる」ということができるようになれば海外生活はうまくいきます。そのためには「自分の言いたいことを伝えきる」という練習が必要です。というのも、日本では以心伝心という素晴らしい言葉があります。日本では日本の常識があり、それをほぼ全員が魂のレベルで共有しているのでイチイチ説明なんていらなかったりします。自分が期待していることが相手には言わなくても伝わっているので相当な部分が言葉から省略されています。それでも仕事が回るのですから素晴らしことです。
しかし、海外に一歩出ればこの日本の常識は一切通用しません。というのも日本の常識は世界の常識ではないからです。だからあえて、以心伝心で伝わっていた部分を全て言葉に出して相手に説明する力が求められます。
やってみると分かりますが、結構つらいです。先程の例で言えば、「遅れそうなら事前に連絡する」という行為はなぜそうしないといけないのかって言われても日本人なら「当たり前じゃん!」ってなると思いますけど、海外では当たり前じゃないのでそれを論理立てて説明しないといけないんです。これ、説明してと言われても結構難しくないですか?
そう、こういう説明する練習を日本人は今まであまりやってこなかったのでとても苦手なんです。でもこれができないと最初の例のように意思疎通ができなくなってきます。だからここは踏ん張りどころです。自分の手持ちの言葉で、やさしく、簡潔に、相手に分かるように説明するのです。一回説明しただけじゃ分からないでしょうからなんどか折に触れて説明しましょう。
このように海外で働く際には相手に説明する機会が非常に多くありますし、これができないと海外生活が成り立ちません。ですから、少しでもよい海外生活のスタートダッシュが切れるように「アウトプットする練習」は海外転勤前にやっておいてほしいです。短期間でも見違えるように自信を付けることはできますよ。
アウトプットの練習は他人からの評価が絶対的に必要です。成長が感じられないと自信につながらないからです。
おすすめのサービスは下記を参考にしてください。
「アクエス」英会話スクールはなぜ効果的なのか?
【初めての海外赴任者必見!】英語力上達!キーワード別サービス比較表
まとめ:これ以上同胞を失わないために
何度も言いますが、海外転勤に任命される方は皆さん仕事ができる優秀な方です。海外転勤者は日本にいた時以上に様々な仕事こなす必要があり、マルチタスクは必須だからです。海外転勤に選ばれた人はそういったポテンシャルがあると判断された会社にとってはとても大事な人材なのです。
そういった優秀な人材に伸び伸びと海外転勤生活を送ってほしい。そして「海外転勤は良かった!」と思って頂きたいという思いです。
海外転勤に選ばれる方は仕事で結果を出してきた方だと思うので、本業は私は心配していません。その本業でどれくらい成果を出せるかは「自分の言いたいことを伝えきれるか」という「アウトプット力」にかかっています。
せっかく海外転勤に選ばれたのですから、ぜひ海外転勤前にこの「アウトプット力」を磨いて、最高の海外生活をスタートさせて頂けることを願っています。
アウトプット力を磨く方法はこちらへ。
【初めての海外赴任者必見!】英語力上達!キーワード別サービス比較表
まとめ記事はこちらへ。
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