日本のようにフィリピンでも税務調査はあります。3年に一度が基本ですが、場合によっては毎年税務調査が入る企業もあります。
私もフィリピンで税務調査の支援を行うことがありますが、現実を知れば知るほど落胆します。フィリピンの税務調査は下記の流れで行われます。
税務調査依頼通知受理(LOAという通知が届きます)
税務署へ資料提出(税務署に言われた資料を提出します)
税務調査結果通知受領
非公式協議
初期的な評価通知(PANという結果通知が届きます)
抗議文の提出(内容に不服があれば抗議文を提出します)
正式な評価通知(FANという最終結果通知が届きます)
抗議文の提出(内容に不服があれば抗議文を提出します)
税務裁判所へ提訴(最終的にお互いが納得しなければ裁判に移行します)
結構なステップが並んでいますが、この中で大事なのは「非公式協議」の部分です。
これは一時期消滅したことがありますが、また復活しました。
そして、このステップでほぼ決まると個人的には思います。
非公式協議なので、税務調査官には言いたいことは言えます。
しかし、ポイントがあります。言いたいことは、まず書面にし、その書面を提出するときにその税務調査官のところに赴いて面前で順番に全て説明し、納得してもらうことです。
私は経験しましたが、この非公式協議で抗議文を送付するだけではほぼ効果はありません。
というのも、税務調査を担当する税務調査官は税務調査に慣れていないことも多く、最悪の場合は税務についてあまり詳しくないことも有り得ます。
そうなると、きちんとした抗議文を提出したとしても、内容を理解できず、スルーされてしまうことも有り得ます。
知識や経験がなくても税務調査官であることには変わりはありません。そのまま抗議文の内容を無視して徴税権を発動することも可能なわけです。
そのまま押し切られてしまうと、会社としてはもう裁判するしか選択肢がなくなります。そうなれば、弁護士を立てないといけなかったり、いつ開かれるかも分からない裁判を行うことになり、会社側としてはとても不利になります。
逆に言うと、裁判にまで持ち込めば税務署の勝ちなのです。よほど大きな金額でなければ、会社にとっては裁判した方が不利になりますので、泣く泣く税務調査官の言いなりの金額で納税せざるを得なくなります。
そうならないためにも、非公式協議において「どれだけ会社側の主張を通すことができるか」が明暗を分けることとなります。
税務を知らない税務調査官にあたってしまった場合はそこできちんと税務を教えてあげることも必要です。会社が税務署に税務を教えるなんて変な話ですがフィリピンでは有り得る話です。
あと、担当RDO(担当地区の税務署)のトップを確認し、その知り合いを探しておくとよいでしょう。
こう言っては元も子もありませんが、フィリピンでは先輩後輩や友人関係で仕事が早く進んだり意地悪されたりすることがあります。
ですから、LOAを発行しているRDOのトップの知り合いに相談し、きちんと協議に応じるよう根回しをしてもらうことも強力な武器です。
根回ししたらあっという間に解決したという事例もありますので、専門的な税務の知識よりもまずは人脈が大事といったところでしょうか。
フィリピンでは人脈の有無はビジネスで成否を分けます。馬鹿にしないで知り合いや人脈を増やす努力を日頃から行っておきましょう。
きっとどこかで役に立つはずです。
フィリピン人は優しい人が多いです。困っている人は助けたいと思う精神を持ち合わせています。友人、知人となればより一層そうです。
ですから、税務調査と言えども、ビビらず、落ち着いて対処する精神力が求められます。
使える人脈は大いに使って、大変な税務調査を乗り切ってください!