最近米国公認会計士(USCPA)の取得を目指す人が増えてきているようです。ただ、実際USCPAを取得するとどんなメリットやデメリットがあるのかよく分からないという人も多いでしょう。そこでUSCPAを取得して実際に働いてみたリアルな感想とともに、USCPAを取得してよかったこと、つらかったことをメリットデメリットとして紹介します。
【まとめ】米国公認会計士のメリット・デメリット
まず結論から書いていきます。
とりあえずここだけでも眺めてみてなんとなくイメージをつかんでもらえたらと思います。
メリット
他人からの評価が上がる
自己紹介が短くて済む
自己紹介が結構な確率で不要
デメリット
継続教育が面倒
期待値が勝手に上がる
人物像を勝手に想像される(会計士=かたそう、つまんなそう)
米国公認会計士のメリットを解説
ここから米国公認会計士を取得するメリットについて細かく解説します。
自信がつく
いきなり主観的な内容ですが、私自身の経験で言えばこれが最大のメリットと言えます。
中学受験、高校受験、大学受験も全部失敗してきた私が、苦難の末になんとか合格を勝ち取れたからです。普通の人ならきっとあきらめていたと思います。しかし私は何年かかっても必ず合格するまで受験し続けるという(今考えればよく分からない)信念のようなものを持って取り組み続けた結果、なんとか合格できたという実績が今の自分を支えています。
米国公認会計士は簡単だとか、USCPAは半年もあれば合格可能だ、などのうたい文句や実際にそのような短期間で合格を勝ち取ることができる人もいると思います。はっきり言って確かに弁護士などの資格に比べればそんなに合格することが難しい試験ではないです。でもこれは人それぞれです。私には米国公認会計士でも難しかったのです。それは勉強の内容が難しいというよりは、合格するまで勉強し続ける気力を維持するという意味で難しかったのです。学習すべき内容はそこまで難しくないです。しかし範囲が膨大で科目数も多く、エッセイまで書かないといけないという浅く広く勉強しなければならないので、一体どこまで勉強すれば合格できる水準に達するのかが見えなくなるところがつらいのです。
私の好きな平井さんの言葉を借りれば、「見えないサンドバックにパンチを打ち続ける日々の繰り返し」というのが米国公認会計士にもピッタリ当てはまると思えるほど迷走した時期が長かったです。
平井さんをご存じない方はこちらへどうぞ。
長い長いトンネルを後ろに進んでいるのか前に進んでいるのかも分からない中でひたすら出口に向かっていると信じて進み続けることでようやく一筋の光が見えてくるという長丁場の戦いでした。
だからこそこの長いくらいトンネルの出口を出られたことは私にとって本当に大きな自信になったのです。
頭がいい人、勉強が得意な人からすれば大したことないと思われると思います。確かに客観的に見れば全然大したことないです。でも私の中では非常に大したことがあったのです。これはその人の感じ方や捉え方なのでかなり主観的です。でもそれでいいと思います。私にとっては米国公認会計士を取得できたことで自信がついたことは間違いないです。それは米国公認会計士を取得することが私の能力よりを超えているものだったからです。だからこそ取得できたことで自信がつきました。その後の人生が変わりました。
USCPAとして突然退職し、フィリピンへ移住した理由【覚悟はいります】
全員が米国公認会計士を取得することで自信がつくかどうかはわかりません。しかし少なくとも私は自信がついたし、それで人生の転換点を迎えられたので、米国公認会計士を取得するメリットの第一にあげました。
他人からの評価が上がる
資格の威力はすごいです。特に日本では破壊的な威力です。米国公認会計士を取得したといった瞬間に周りの目線が変わりました。米国公認会計士といっても普通の人は良く知らないものです。なので、米国公認会計士ってどういう資格ですかと聞かれれば、「アメリカの公認会計士の資格です」と紹介することになるわけですが、アメリカ=すごい、公認会計士=すごい、という勝手なイメージで、自動的に米国公認会計士のイメージが膨らむようです。これによって他人からの評価が爆上がりです。
自己紹介が短くて済む
これは仕事をしている中でのメリットです。私はフィリピンでコンサルティング業を生業にしていますが、初めてフィリピンに来る方や金融機関の方とお会いさせて頂く機会が多くあります。初対面なのでお互いが自己紹介をするわけですが、私の名刺には「米国公認会計士」と書いてありますので、そこから会計の専門家なんですねという形で相手から自分に話を振ってもらえます。普通なら○○会社の▲▲部署で~という感じで細かく説明しないと相手に伝わらないことが多いですが、そのような細かい話は不要です。初回の面談というのは相手はなにが得意か、どんな仕事なら、どのような分野なら助けてもらえそうかを探り合うのですが、「米国公認会計士」と書いてあれば、会計は当然として、税金、法律なども相談できそうだと思ってもらえるし、そのようなことを自分から言うと自慢っぽく聞こえてしまうので私は好きじゃないんですが、そんな自己紹介もかなりの確率で不要なのでとても重宝しています。
他の専門家と一緒に仕事ができる
これは実際に米国公認会計士になって、フィリピンで働き始めてから分かったメリットです。ビジネスというのはなんとも複雑で、「これだけ分かっていれば大丈夫」というものがありません。米国公認会計士といっても、私は会計よりも税務の方が得意だったりするし、弁護士といっても会社法に詳しい弁護士もいれば特許に詳しい弁護士、労務に詳しい弁護士がいるなどそれぞれの士業の方はなんとなく自分の専門分野、得意分野を持っているものです。
そうなると、例えばフィリピンで顧問弁護士をしている人でも、顧問先の会社から税金の相談をしたいんだけど・・・と言われても対応できないわけです。いくら弁護士とはいえ、税務のことはわからなかったりするわけです。その場合その弁護士はどうするかというと、知り合いの公認会計士に相談するわけです。自分の顧問先の会社が税務の相談があるらしい。なんとか力になってくれないか、という具合で声がかかるのです。そんな感じで私も知り合いの弁護士の先生から色々な仕事を紹介されたことがあります。逆に私の顧問先で労働法に関する細かい相談があると言われれば、その弁護士を紹介するのです。このように士業というのは持ちつ持たれつでお互いの得意分野、専門分野をカバーし合って仕事をする機会がたくさんあります。
米国公認会計士も法律の勉強はしますので、ある程度の法律の知識はあります。ただ、それを実際にどうやって運用するのかとか、その法律における裁判例はどういうケースがあるかとか細かい話になれば弁護士に聞くのが一番です。
以前フィリピンでIT企業のフィリピン投資をお手伝いしたことがあります。
その時は、会社の全体のセットアップは弁護士、会計税務は私(米国公認会計士)、ビザは税理士(その税理士の先生はビザの取得の経験値が高かった)、人事労務は人事労務の専門会社といった具合に、それぞれのプロフェッショナルが集まって一つのプロジェクトを担当するという仕事がありました。こういう仕事は米国公認会計士になっていなかったらなかなか経験できなかった仕事なのでとても面白かったです。このプロジェクトを経験した士業の皆さんとは今でも仕事を紹介し合う仲間で時々情報交換しています。これも米国公認会計士になるメリットです。
米国公認会計士のデメリット解説
メリットばかり語っても情報が偏りますから、デメリットも紹介しますね。
米国公認会計士ならではのデメリットのような気はします。
お金がかかる(取得まで&取得後)
こおれは残念ながら本当です。米国公認会計士取得前もお金はかかりますし、取得してからも結構お金がかかります。
取得前は予備校代、テキスト代、試験代などで、毎年少しずつ試験の内容が変わるので、その年に合格できればいいですが、不合格になってしまった場合はまた新しいテキストを買い直さないといけません。試験代もかなり高いですね・・・。
米国公認会計士はライセンスを取得して維持するならこれまたお金がかかります。
もちろん州にもよるのでしょうが、私がライセンスを保有しているワシントン州は、毎年20単位、3年間で120単位の取得が求められています。しかもこちらはワシントン州が公認している学習期間でないとダメですので、そちらの教材費等に1年間で200ドルくらいかかります。ライセンス更新料で230ドルです。
まあ米国公認会計士を増やそうとしていた協会の意図も分かる気がします・・・。
これで士業が続けられて名刺に書くことができるのでそのメリットを考えて私は更新を続けていますが、そこまでメリットを感じない方であればこのお金はもったいないという判断になってしまうことも致し方ないかなとは思います。
継続教育が面倒
上にちょっと書きましたが、米国公認会計士は取得後も「とにかく勉強!」です。
会計基準や法律などはどんどん新しくなっていきます。米国公認会計士としては常に新しいルールを身に付けていなければなりません。ですから継続教育は避けては通れません。しかしまあこれが面倒・・・。私がライセンスを持ってるワシントン州では以前は3年間に120単位を取得すればよかったので、3年目の大みそかはさながら大学受験勉強のように忙しかった(?)です。というのも、ライセンス更新のための単位取得期限が12月31日だからです。3年間あるのだから計画的にやればいいのにと思う方が多いと思いますが、きっと私のやり方で更新していた方が大半かと思います(笑)。それに気が付いたのか、それを良しとしない協会が怒ったのかわかりませんが、2020年から毎年最低20単位は取得しなければならないルールに変更になりました。ということで、このブログを書いている横で頑張って継続教育のための試験を受けているところです。きっと今年も年越し継続教育になりそうです・・・。
そう、継続教育はそれぞれの単位で試験があります。私が受講しているCPE DEPOTは小テストと最終テストに分かれていて、最終テストが基準点をクリアすれば単位がもらえる仕組みです。だからそこそこ勉強しないと単位が取れずにライセンスを失効してしまうリスクがあるのです。
私は米国公認会計士を取得するまでも大変でしたが、取得してからもそれを維持するのもなかなか大変です・・・。まあ米国公認会計士を目指している方は合格後のことはまだ考えられないでしょうし、考える必要もないと思いますので、合格してからライセンスを取得するかどうか悩むときの判断材料の一つに加えてもらえればと思います。
他人からの期待値が勝手に上がる
これは人によるかもしれませんが、私は上述した通り勉強が全然できなかった人です。そんな私が米国公認会計士の資格を取得してしまったために周りの目が一気に変わったという話をしました。日本人独特なのか分かりませんが、名刺に書いてある「米国公認会計士」を見ると皆さんの期待値が勝手に上がるんですね!「米国公認会計士」というからにはアメリカに住んでいた期間が長かったに違いない、きっとアメリカの会社で長く働いていたんだろう、きっと英語はペラペラなはずだ、などなど。こちらがなにも言っていないのにそういう想像をされるのです。そうやって相手から自分への期待値がどんどん上がっていきます。これらが原因でそうでない一面が私から垣間見えるとクレームになることがあります。私はこれを期待ギャップと呼んでいます。この期待ギャップを起こさないように頑張って相手から自分への期待値を下げる努力をする必要がありました。資格の威力はものすごいもので、時には破壊的な威力になって自分に襲い掛かることもありますから要注意ですね。
人物像を勝手に想像される(会計士=かたそう、つまんなそう)
これも上に似ていますが、「米国公認会計士」という肩書から勝手にキャラクターまで想像されることがあります。私は大学卒業後、普通の企業で経理をやっていたので、ある意味会計士という肩書で働いている期間はまだ短いのです。ですから一般的なサラリーマンの感覚の方が近く、体育会系の会社に勤めていたこともあってそういうノリは好きな方でした。しかし、「米国公認会計士」と書いてあるものだから、「堅そうですね」とか「真面目そう」など完全な肩書からのイメージで自分のキャラクターをとらえられてしまうことが少なくありません。
そんな中でクライアントと一緒に会食をすると、「なんか意外な一面があるんですね」とか「そんなキャラクターだと思わなかった」などと暴露されることがあります。やはり「会計士」という名前に一定の固定観念を持っている人も少なくなく、その型にはめて私を見ていたんだなあということがよく分かります。どうしても相手は「米国公認会計士」というフィルターを通して私を見ることになるので、無意識の中で私の人物像を想像されてしまうというところは大きな悩みです。
【結論】米国公認会計士を取得してよかったか?
正直米国公認会計士(USCPA)を取得してみて働いた結果、メリットもデメリットもありました。
それでも総合的に見ればメリットの方が大きかったと思いますし、米国公認会計士を取得して得したことはたくさんありました。
米国公認会計士は使えないとか米国公認会計士は意味ないとかマイナスなイメージを持たれることが多い資格ではあると思いますが、それは結局のところ資格の使い方というか活かし方によるのかなあと言った感じがします。
もちろん万人にウケる資格とは思いません。しかし、米国公認会計士は英語、会計、税務、IT、法律など様々な分野の知識を浅く広くしかも英語で勉強できるので、ビジネスマンとしての基礎能力は一気に引き上げることができることは大きなメリットです。
まだ米国公認会計士のことを知らない方はぜひ一度情報収集することをお勧めします。
以下にリンクを貼っておくのでもしよかったら見てみてください。
ちなみに、米国公認会計士を独学で取得したいという強者もいます。
独学で頑張りたいという方は下記の記事も参考にしてください。
米国公認会計士を取得することで人生が変わった自分としてはぜひこの機会に自分の人生を見直す時間を作ってもらえたらと思います。たかが資格、されど資格です。人生に勢いは大事です。思い立ったら即行動です。応援しています!
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