フィリピンでUSCPAとしてコンサルをやっていると色々な相談を受けます。
会計帳簿を作る仕事を請け負っていると、クライアントの従業員による不正に出くわすことがあります。
不正に絡んだ話はたくさん聞いたことがあったのですが、目の前で不正をきちんと見たのは初めてだったのでショックでした。
フィリピンで会社経営をされる方はぜひ注意頂きたいと思います。
目の前で見た会計不正の実態
フィリピンでは会計の不正は多いと聞きます。
経済発展が著しいフィリピンとはいえ、その恩恵を受けているのはごく一部の国民だけで、ある意味貧困層はより貧困になり、富裕層はより富裕層になるという格差が開いただけのように感じます。
それでも中間層が少し勢いが付いてきているので消費行動はすさまじいものがあります。
日本人からすればドキドキするようなお金の使い方もしますし、給料が入ったらその日のうちに全額引き出して8割くらいはその場で使ってしまうほど宵越しのお金は持たない主義です。
そんな金銭感覚ですから、お金には要注意です。
フィリピンでは働いている人は一部です。
家族が10人でも働いている人は2人くらいでしょう。
つまり、2人で10人の生活を支えないといけないのです。
だからフィリピン人はお金が必要なのです。
自分のためというよりは家族のため、生活のためという感じです。
国の保障はほぼないので、自ら稼げなくなったら生活できなくなるのです。
だからお金を手に入れなければならない、自分はお金を必要としている、お金をもらうのはしょうがないことなんだというマインドセットになっています。
これでお金を得るということを自分で正当化します。
つまり、本人は悪いことをしているという感覚がありません。
お金が必要なんだからしょうがないじゃないかという感覚なので、怒ったところで逆ギレされるだけです。
今回私が見た例でもそうでした。
ふたを開けたらサラ金やらなんやらから多額の借金をしていた様子。
これでどうしてもお金が必要な理由が揃っていました。
不正の手口
その会社では基本は小切手での支払いをしていましたが、一部は現金を渡して支払っていたそうです。
本来は会社から受け取ったお金はそのまま仕入先等に支払しなければならないわけですが、それをせずに自分のポケットに入れていたようです。
最初はちょっと明日お金が必要だからこのお金を借りよう・・・というすぐ返すつもりで借りたつもりだったそうです。
しかし、その後もお金は必要となりますから、結局ずっと返せず、毎回「借りているだけだから・・・」と自分を騙しているうちにそれが当たり前になってしまったようです。
しかもたちの悪いことに、自分で仕入先からの請求書や税務申告書に手書きで一桁追加するなどの工作を行って文書偽造をした上で支払いをするお金として受け取って、正規な金額との差額は自分のポケットに入れていました。
一回やればもう慣れたものです。
バレないとなれば毎回やるんですね。
しかも、帳簿と合わなくなってしまうので、その分の合わない差額は自分で請求書を偽造して架空取引をでっちあげていました。
だから帳簿上はピッタリ合っているので帳簿を見ただけでは分かりません。
帳簿に記載してある取引ごとに請求書などと突合すれば分かりますが、経営者側にそこまでの余裕はなかったようです。
結局数年間に及んだようですが一体合計いくら着服されていたのか想像したくないくらいです。
不正防止方法
非常に古典的な不正方法だったと思いますが、やはり経営者が「見ていない」と分かってしまうと気持ちが緩んでいきます。
お金が必要だという口実はいくらでもあります。
本人でなくても、家族がお金を必要とするケースもあります。
今回の反省点としては下記です。
どうしても現金で払わないといけない時はどこに、いくら、なぜ払うのかを確認し、支払い後の領収書を提示させる
銀行間送金を利用する
小切手を使用する
小切手は宛先、金額は経営者が記入する(ブランクは絶対ダメ!)
支払先には定期的に残高確認する(未払いがないかどうか)
客先には定期的に残高確認する(未回収がないかどうか)
帳簿に記録する時は原本の証憑を確認する(請求書、領収書など)
毎月定期的に帳簿を締める(一か月以内)
従業員の生活を把握する
まとめ:隙を与えないことが肝心です
経営者としては不正を行う隙を作らないことが大事です。
常に「見ている」という感覚を植え付けることでかなり不正がしにくくなるはずです。
不正はどんな事情があれ許されるものではありません。
不正が癖になることもありますから会社のためにも本人のためにも不正を見つけた場合は厳正に対処しましょう。