海外赴任者は英語が必須と言われています。特に私が駐在しているフィリピンでは現地の言語はあるものの、ビジネスでは英語が主流です。
しかし、日本企業の場合、必ずしも英語が得意な人が海外駐在するわけではないようです。
そのため、英語が苦手なのに海外勤務を命じられて、英語を勉強しなければと思っている方も多いと思います。しかし、英語の勉強と言っても、書店に行けば様々な英語学習の書籍が並んでいて何から手を付けていいのか分からない人が多いのではないでしょうか。
そこで、フィリピンでの現役駐在員である私が考える駐在員が行うべき英語学習の優先順位について解説したいと思います。
筆者紹介
・初めての海外転勤
・フィリピン在住
・USCPA(米国公認会計士)として会計事務所に5年以上勤務中(現在進行中)
英語能力における構成
英語の能力は、4技能あります。
皆さんお馴染みの、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの4つです。
そしてこれらを支えているのが文法です。文法の神髄は第一に「単語の並び順」、第二に「いつの話題か=時制」と考えます。
そして文法を支えているのが英単語とセットフレーズ(いわゆる熟語みたいなもの)です。
つまり、普通に英語を学習するのであれば、まずは英単語をある程度暗記する。その次にセットフレーズという単語と単語を一緒に使うことで表現する方法w学習する。その上で文法を勉強。これらがある程度のレベルになったところで、ようやく英語の4技能を個別に練習していく、という流れになります。
中学校や高校に行かれた方であれば、これらの順番で英語学習をある程度は行っていると思います。
しかし、英語が苦手な方は、これら4技能はおろか文法が弱い方、単語をあまり知らない方など様々な点で苦手意識をお持ちだと思います。
本来は英語の4技能をまんべんなく学習するのがベストなのですが、海外転勤者は英語学習のみにそんなに多くの時間は割けないでしょう。たいていの方は時間がないと思います。
英語学習は学習ターゲットを絞ること。あれもこれもは無理です
海外転勤者には時間がありません。原則的には4技能をまんべんなく学習するのがいいに決まっていますが、それは夢物語です。もちろんできる方はぜひそうして頂ければと思いますが、それができないからお困りですよね。
ではそもそもの話として、なぜ英語を勉強しなければならないと思ったのでしょうか。
それは海外転勤になって、海外の勤務先で英語を使って仕事をすることになるだろうからですよね?
逆に言えば、海外の勤務先で英語が不要なら英語なんて改めて勉強する必要はないですよね?
そう、海外勤務者が英語を勉強する目的はあくまで「海外の勤務先で業務をこなせること」です。
英語マスターになる、英語の専門家になる、英語でご飯を食べるため、といった英語を軸とした仕事ではないという前提がそこにはあります。
であれば、仕事ができるようになればいいだけの話ですから、仕事に必要な英語の能力に絞って学習する方が効率がいいです。仕事で必要のない英語学習はあえて言えば必要ないわけです。もちろん勉強すること自体は素晴らしいですし、ぜひやって頂ければと思いますが時間が限られている中で最大の効果(海外駐在時の不安を消すこと!)を得るためには「海外駐在時に必要な英語力に絞って短期間で学習する」ことを強くおススメします。
その他の勉強は海外駐在後に少しずつ進めていけばいいと思います。
まずは学習ターゲットを絞り、一点突破を目指しましょう。
海外駐在員に絶対必要な英語能力。それは自分の言いたいことを言える力(アウトプット能力)です。
私のフィリピンでの5年以上の海外駐在経験から言えることはこの1点に尽きます。
英語能力の中で一番大切なのは「自分の言いたいことを相手に伝えるアウトプット能力」です。
私はUSCPA(米国公認会計士)およびEA(米国税理士)という会計税務の専門家という肩書の中で、英語にはある程度自信を持ってフィリピンに赴任しました(実際には移住ですが)。
私は特段海外経験はありませんでした。留学もしたことないです。本当に普通に学校に通い、学校の英語学習を行ってきただけで、特段英語に関して特別なことをした経験はありません。
それでもフィリピン赴任前にある程度英語を使って日本でも仕事をしていましたので、フィリピンでもうまくいくはずでした。
ところが、現実はそんなに甘くなかったです。
フィリピンに赴任した当初、全く自分の言いたいことが相手に伝えられないんです。指示がうまく出せない。これでは会社は回りません。
多くの日本人は海外駐在となればそれなりに高位の役職に就くことになります。
私はフィリピンでコンサルタントをしていますからクライアントは日本企業なので日本人駐在員と知り合いになりますが、中には日本では役職なしの営業マンだった方が、いきなりフィリピンの工場長に抜擢され、急に数百人の従業員のトップになった方もいます。
その方は元々営業マンで、英語が得意なわけでもなく、会社の経営経験などあるはずもない中でいきなり子会社とはいえ会社のトップをやれと言われて大変苦労していました。
こういうパターンの日本人駐在員は本当に多いです。
この場合、自分が相手にどうしてほしいのかをきちんと伝えられないと仕事はおろか会社自体が回らなくなってしまいます。
ですから、相手に伝える力は絶対的に必須な英語能力となります。
フィリピンに駐在している私からおススメしたいのは、まずは「自分の言いたいことを言えるようになる英語能力」を身に付けるということです。
海外駐在員が行うべき英語学習の手順
時間がない海外駐在員は優先順位を付けて学習した方がいいです。
アウトプット分野
・ライティング=メールを書く能力
・スピーキング=言いたいことを口頭で伝える能力
インプット分野
・リスニング=相手の言っていることを理解する能力
・リーディング=メール等から書いてあることを読み取る能力
この中で、アウトプット分野を優先して学習するようにしてください。
学校の英語の授業は真逆で、インプット分野の学習ばかりでした。ですから中学・高校に行かれた方であれば、それなりにインプット分野の勉強はしているんです。それなのになぜ英語に自信が持てないかというと、インプットした英語をアウトプットする機会が極端に少なく、自信を持つ機会がなかったからです。簡単に言えば、アウトプットする練習が足りないだけなのです。ですから、アウトプットする時間を持つようにすれば自然と「ああ、自分はこれでいいんだ」と思えるようになると思います。
個人的には日本人で義務教育に通われた方であれば仕事に必要な英語能力に対するインプットは既に十分だと思います。あとはそのインプットしてある英語をいかに瞬時に引っ張り出せるかだけなのです。逆に言えば、インプットしてある情報のみでアウトプットする練習が必要です。つまり、単語力不足は「言い換え」や「置き換え」で補うのです。単語力が不足しているからもっと単語を覚えなきゃ!という考えはやめた方がいいです。そういう考えでは世の中の単語を全て暗記するまで英語に対する不安は消えません。
この辺りのテクニックはまた別の記事にしたいと思いますが、例えば、buy(買う)という単語が分からなければ、getという単語でもいいわけです。takeでもいいでしょう。getやtakeは中学一年生で学習する単語ですから皆さん知っていると思います。皆さんは「買う」から考えて買うって英語で何て言うんだろう??って考えて買う→buyを想像することになると思いますが、使う単語はbuyじゃなくてもいいのです。場合によっては、wantでも意味は通じるでしょう。このように「買う」を英語に翻訳するということではなく、「要するにどうしたいのか?」を考えることが大事であり、buyという行動は「自分のものにしたい」ということですから、そうすれば、get、take、wantなどの単語でも同じ意味で言い換えが可能になるのです。日常の仕事や生活の中ではこのように自分の手持ちの単語を駆使して言えないだろうか、表現することはできないだろうかということを常に考えることがアプトプットの練習になるのです。
言語学習に終わりはありません。英語のプロである通訳者や翻訳者ですら日々勉強しており、まだまだ英語ができないと思っているほどです。
そんな英語でご飯を食べている方が「まだまだ英語ができない」というほどなのに、英語が単なるコミュニケーションの道具にすぎない海外駐在員が英語を完璧にするなど到底無理な話なのです。
ですからどこかで「終わり」を作らないといけません。
明確な終わりの基準はありません。そこで私としては、「自分の英語であきらめがつくようになったとき」を終わりの基準にしたらどうかと思っています。
つまり、「私はこれでいいんだ。決して完璧じゃないしまだまだだけどこれなら大丈夫」と思えるレベルまで到達したらOKということです。
アウトプット学習をしていると自然とインプット能力も向上します
これは不思議と思われるかもしれませんが、実はアウトプットの練習を繰り返していると、自然とインプット能力も磨かれていきます。
アウトプットするということは、必ず手持ちの単語や表現を使うことになります。当たり前ですが、自分が知らない単語や知らない表現はアウトプットできません。もちろん自分の知っている単語や表現を駆使して乗り切ることは絶対的に必要です。しかし、どうしても表現できない場合は辞書などで調べることになります。そこで、自分が知りたい、表現したい内容を調べることになるのですが、これは積極的に情報を取りに行っているので記憶の定着率が断然違います。
単純に英語のテキストを読んで、分からない単語を辞書で調べるという行動より、自分が表現したい単語を辞書で調べる行動の方が圧倒的にその調べた単語や表現に対するインパクトが違うのです。しかも、その調べて分かった単語や表現をアウトプットする機会を得ることで自分の中で使える単語や表現になっていくのです。
ここまでくれば既に血となり肉となっているのでもう忘れることはありません。何度も使っていれば考えなくても自然と覚えるでしょう。正直言って、記憶しているレベル、知っているレベルの単語や表現では全然使い物になりません。やはり実践で使えた単語、通じた表現というレベルまで持って行かないといざというときに役に立たないのです。なぜなら、この実際の場面で使えた、通じたという体験が自分の自信になっていくからです。
この成功体験を小さくてもいいから積み上げていかないと英語は絶対できるようにならないのです。
当然ながらこれは一朝一夕には身に付かないことです。
本来言語というのは、赤ちゃんの時からある程度ものごころつくまでの間にアウトプットしては失敗し、失敗から徐々に正しい言葉の使い方を何年もかけて学習していくものなのです。頭が柔軟な赤ちゃんでさえ数年を要するのですから、頭が固くなってしまった大人は時間が掛かるのは当然のことです。
ただ大人だからといって諦めることはできません。
海外駐在員には英語は必須ですから、チリツモでとにかくアウトプットを繰り返し、アウトプットする中でどうしても行き詰ってしまった時には新しくインプットする。そしてインプットしたら何度もアウトプットして血肉にして脊髄で反射的に出てくるようになるまで使い倒す。それを実践で繰り返し、相手に通じたらOK、あとは反復して徐々に自信を付けていく。
この手順で英語に対する苦手意識が少しずつ解消していき、いつの日か「自分はこの英語でいいんだ。だってこれで自分のやりたいことができているじゃないか」といういい意味でのあきらめの境地にたどり着くことでしょう。
ここまでくれば海外駐在員の英語力としては問題ないと思います。
もちろん言語学習に終わりはありませんから、引き続き気長に学習は続けてくださいね。
まとめ:英語学習手順を間違えず、あきらめの境地を目指してください!
いかがでしたでしょうか。フィリピン駐在歴5年以上の私の独断と偏見に基づいた英語の先生は絶対教えてくれないであろう極端な英語学習手順を紹介しました。
しかし、英語は道具です。道具は使えてなんぼです。動かない耕運機よりボロボロでも使えるくわを目指してくださいという内容でした。
分かりにくい表現かもしれませんが、英語は使えないと全く意味がありませんので、使える英語を習得し、自信を持って海外駐在生活を乗り切ってください!
応援しています!