USCPA(米国公認会計士)を取得したあとのキャリアについて悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
USCPAに合格したら転職エージェントに相談して求人を探す人が多いと思います。
それ自体は大賛成ですし、自分の可能性を広げるためにも積極的に話を聞いてみることをおススメします。
しかし、探し始める前に考えておいてほしいことがあります。
それは「自分はどういうキャリアを描きたいのか」という軸を持っておくことです。
これを持っておかないと色々な求人に目が行ってしまい、最終的に何がしたいのか、どういう人生を送りたいのかがわからなくなります。
USCPAは監査法人に就職できるのか?
USCPAは米国公認会計士の資格ですからUSCPAに合格した人が最初に考える転職先が監査法人でしょう。
私がUSCPAに合格した時は多くの監査法人で連日のように就職説明会を開催していました。
監査法人は事業が複数に渡っているので、様々な部門がこぞって採用活動をしていました。
会計監査部門はもちろんのこと、アドバイザー部門、税務部門、一番急募だったのは内部監査部門だったと記憶してます。
今でもたまに声がかかりますからまだ会計士が足りていないのでしょう。
特に大手のBig 4(PwC、KPMG、EY、Deloitte)はどこも採用活動に忙しそうでした。
そんな状況ですから、USCPAを取得していれば監査法人には就職できる能力はあるでしょう。
タイミングもありますから確実かどうかは言い切れませんが、少なくともチャンスは多いと思います。
人気な部門やそうでもない部門など同じ監査法人でも部門によって難易度も違うようです。
部門はどこでもいいからとにかくBig 4に就職したいということであれば、高確率で就職できるでしょう。
ただし、Big 4というくくりであっても、やはり会社ですからそれぞれ文化や体質は異なるようです。
私は監査法人に就職したことはありませんが、逆に上場企業に勤めていたので、毎四半期監査法人の先生方と一緒に仕事をしていたので監査法人の中がどういう雰囲気になっているのかはよく感じられました。
具体的には私の勤めていた会社では、PwCとDeloitteの2社と付き合いがありました。
同じ会計監査というサービスを提供してくれるのですが、全く違うサービスを提供してくれているかのように文化が違っていました。
なぜ文化が違うことが分かるかというと、同じ会計監査の仕事なのに仕事の進め方がまるで違うのです。
それに実際に働いている会計士の性格も違っていました。
もし監査法人に就職するのであれば、こういった監査法人ごとの中身の違いについても、しっかり企業研究して、できれば実際に働いている人に話を聞いてみた方がいいでしょう。
自分の性格と全然違う雰囲気の監査法人に勤めるのは結構しんどいと思いますので、そのあたりは慎重に検討してみてください。
監査法人は人手不足?
私はすごい疑問でした。
なぜあれほどにも連日就職説明会を開催しているのか。
そんなに採用したらすぐに枠が埋まってしまうのではないか。
就職していないのにそんな余計な心配ばかりしていました。
中の人に話を聞いてみると、一時期監査法人に人が入りすぎてしまったために、一時的に採用を絞っていた時期があったようです。
以前は会計士を増やすという目的で多くの会計士を世の中に誕生させたため、会計士の供給過多になってしまったようです。
採用を絞っていたのですが、その後監査の需要が爆発。
一気に会計士が足りない状況になりました。
しかも監査法人は色々なサービスを提供していますから、各部門で人手が足りない事態になりました。
そこで、監査法人が目を付けたのがUSCPAです。
USCPAは日本では監査調書にサインすることはできませんが、公認会計士の勉強はしていますからある程度は即戦力として使えるようです。
特に監査業務などの多くの人手がいるような仕事で、そこまで専門的な知識や経験が必要ではない仕事については猫の手も借りたいくらいですからUSCPAに手伝ってもらおうとしたわけです。
それに大手というだけあって、辞めていく人も多いです。
どうしてもキャリアアップの一環というか自分のキャリアに光るものを求める人が多いのでそういう人が修行のために監査法人に就職するケースも多いようです。
そういう人は2~3年ほど監査法人で働いたら別の職場へ転職していくのです。
大手監査法人に勤めていたということで転職も有利になるのでしょう。
このように大手らしく労働者の流動性が高いので、常に募集・採用をしていないと仕事が回らないということのようです。
私が住んでいるフィリピンでもBig 4の駐在員はいます。
仕事柄一緒に仕事をする機会が多いのですが、あるBig 4の駐在員は監査業務のクライアントだけで約300社あると言ってました。
それがほぼすべて自分のところでハンドリングしなければならないのですから忙しくないわけがありません。
Big 4の海外駐在員はみんなこんな感じでしょう。
仕事ができることは当然ですが、なによりも体力・気力がないと話にならないと感じた次第です。
Big 4で上に上がっていくためには心技体が揃ってないと厳しいでしょうね。
USCPAが監査法人に転職するときの注意点は?
USCPAに合格して、監査法人で昇進していきたいと考えている方であれば監査法人への就職はおススメです。
言うまでもありませんね。
USCPAは会計士の資格だから、監査経験が欲しい。
そういう方も監査法人での経験はおススメします。
公認会計士としてキャリアを積み上げていくなら、会計監査の経験というのはなくてはならないものです。
また、その監査経験を通して世の中の仕組みや会社での立ち振る舞い方も学べるでしょう。
特に若い方(20代前半)であれば仕事のテクニックよりも会社の中での立ち振る舞い方や会社での仕事の進め方、えらくなる方法など社会の基本的な構造を理解することの方が大事な気がします。
そういった会計監査の経験の獲得を狙って監査法人に就職するならOKです。
きっと素晴らしい経験が得られると思います。
私自身ももう少し若い時にUSCPAに合格していたら監査法人への就職も十分選択肢に入っていたかもしれません。
福利厚生はそれほど充実しているとは思いませんが、なにより給料がいいです。
残業代が半端なくつくので同年代の人よりは破格の給料になるでしょう。
まあ問題はそのお金を使う時間がないほど激務ってことですけど。
しかし、監査経験が必要ではない、興味がない、ということであれば監査法人で監査経験を積む意味は個人的にはあまり魅力を感じません。
残念ながらUSCPAは監査法人内では本流ではありません。
やはり日本の公認会計士が支配する世界です。
あくまでUSCPAは猫の手も借りたいと思っている監査法人の猫なのです。
もちろん猫の手であっても立派な仕事ですし、それなりに責任のある業務ですから経験にはなります。
監査法人の中では雑巾がけのような仕事かもしれませんが、雑巾がけだって誰かがやらなければ部屋はきれいになりません。
だから必要な業務ではあります。
ただ、雑巾がけなのでそれを経験ととらえるか、雑用をやらされているととらえるかでかなりモチベーションは変わるでしょう。
USCPAは日本の公認会計士のように権限はありませんから、えらくなることはできません。
それでも経験値を稼ぎたい、大手というブランドの中で働いてみたい、という経験値稼ぎを目的とした就職であればぜひチャレンジしてみたらいいと思います。
大手だけあって様々な経験が得られますし、多くの人が働いていますからそれだけ知り合える人も多いわけです。
その中で自分の人生にプラスになるヒントを得られたらいいですね。
このように大手監査法人に就職するのであれば、その就職する明確な理由・目的を持って就職しましょう。
なんとなく大手がいい、監査法人がいいという程度では就職しない方がいいです。
監査法人のあとのキャリアは?
監査法人に就職する人は大抵数年で退職します。
監査は毎年同じ仕事の繰り返しだから仕事がワンパターン化して飽きてしまうということと、そもそも経験値を得るために就職しただけなのでどっしり長期間に渡って働くということを考えている人がそもそも少ないということもあります。
ただし、それだからこそ監査法人でしっかり根を張って頑張れば周りが辞めていくのである程度えらくなれる可能性はあるかもしれません。
ですから、あえて監査法人に残って監査を極めるのもありです。
多くの監査法人を退職した人の次のキャリアはどこなのでしょうか。
実は監査法人を辞めて別の監査法人に転職する人もいます。
私の部下もPwCからEYに転職して、そのあと今の会社に転職してきました。
監査法人は行っている仕事は同じですから、会社の文化や空気が受け入れられるなら監査法人からの監査法人の転職もありですね。
一番多いのは事業会社への転職ではないでしょうか。
事業会社といっても公認会計士ですから一般社員のポジションにはなかなか入れないと思います。
皆さんの会社に公認会計士の人はいますか。
恐らくほとんどの会社では公認会計士(USCPAを含めても)が社員として在籍しているケースは少ないのではないでしょうか。
日本の会社ではまだまだ公認会計士・USCPAという資格保有者がどのようなことができるのかよく理解されていないので、そんな有資格者を会社の中でどのように扱えばいいのかわからないから採用できないのだと思います。
ではどんな事業会社に流れているのか。
それはコンサルティング会社やM&Aの仲介会社、もしくは上場を目指している会社などでしょう。
これらどの企業をとっても公認会計士のキャリアは生かせます。
特に監査経験を持っている公認会計士であれば、監査経験で培ったその目がそのまま事業会社の付加価値として活きてくるのです。
もしくは外資系企業の財務責任者(CFO)や経理部長なども考えられます。
日本では考えられませんが、海外の会社であれば自社に公認会計士が在籍しているのは普通のことです。
経理部長は公認会計士の資格を持っていなければそもそもなれませんし、役員ともなれば公認会計士の資格なんて持っていて当たり前です。
それくらい海外では要職に就く人であればある意味当然の資格なので、そういうポジションにはまることもあります。
このように監査法人での経験、特に監査経験というのはある意味でつぶしが効く経験ですから、監査の経験を積んだ人はその後のキャリアに幅を持たせることができるでしょう。
ぜひ監査経験を活かして羽ばたいてもらえたらと思います。
頑張ってください!